コラム

「みる」だけなんてもったいない!今こそ、「みる」だけから「する」スポーツへ変わるとき(2/2)

企業とDo Sports

Doスポーツで広がる日本の未来

編集部 :
スポーツ人口が増えることで、社会的、経済的にはどのようなメリットがあるでしょうか。
間野教授:
スポーツをするために必要な道具、フィットネスクラブなどのサービスへの波及が考えられます。
体を動かすことは身体や精神の健康につながるので、スポーツをする人としない人では、長期的に、健康状態や医療費の面で大きな違いがでてくると思います。
また、人口が減少していくなかで今の経済活動や経済水準を維持するとなると、交流人口を増やさざるを得ません。国内の交流人口の増加や、海外からのインバウンド(訪日外国人観光客)を集めるとき、「スポーツツーリズム」が重要になってきます。
WMG2021関西の開催に関しては、2017年8月にWMG2021関西の組織委員会は、経済波及効果(国内外からの出場者や観戦者の宿泊、食事等)が、1,461億円になるとの試算を発表しています。
輸出産業では、「東京ドームシティ」のような、スタジアムアリーナのセットを輸出産業化できると思います。東南アジアのような、日本以上に高温多湿の国で可処分所得が増えてくると、室内スポーツ施設のニーズが高まると思われます。「東京ドームシティ」の、スポーツ施設のドーム技術、遊園地やショッピングセンター、健康増進施設やホテルと全部一体化したパッケージを、輸出できる可能性があります。
ほか、途上国には「体育の授業」がないので、文部科学省が2014年から、カリキュラムを輸出しようと動いています。
今後、経済大国ではなくなっていく日本が、スポーツという平和で楽しいものに関する知見を他の国に提供することで、世界から尊敬される国、世界の国と友好関係を築ける国になれると思います。

Doスポーツは人と人をつなぐ

編集部 :
政策面ではどうでしょうか。
間野教授:
少子高齢化時代のコミュニティ形成で、Doスポーツの役割はますます大きくなっていくと思います。
昔からの地縁血縁によるコミュニティ意識が薄れていくなかで、スポーツという紐帯を通じたコミュニティ形成が重要になっています。
ヨーロッパでは、コミュニティ形成に、地域のスポーツクラブが重要な役割を示しています。1995年から文科省(当時は文部省)が、地域のスポーツクラブをヨーロッパのように発展させる「総合型地域スポーツクラブ」の育成を進めています。
また、現在日本には多くの外国籍の人もいるようになり、多様化が進んできています。外国籍の生徒が多くなった学校の子供たちにとって、スポーツという言語を超えたものは、多文化共生や、インクルージョンで役立つ可能性があります。

アジアに広がるDoスポーツの輪

編集部 :
これまでお話しいただいたことのほかに、WMG2021関西に期待されていることがありましたら教えて下さい。
間野教授:
WMG2021関西は、アジア初の大会でもあるので、アジアの発展途上国の人達の参加を促すことが大事だと思います。
例えば、メコン川流域の、ミャンマー、ラオス、カンボジアといった国の人々も、前回のオークランド大会(ニュージーランド)は行けなくとも、日本、関西なら何とか参加できるかもしれません。
スポーツする環境が整備されていないアジアの国の人たちを巻き込むことも、アジアでの初開催に意味があると思います。

トライアスロンが速い人は仕事もデキる

WMG過去大会のトライアスロン競技風景

編集部 :
最近、日本の経営者に人気のDoスポーツは何でしょうか。
間野教授:
若手の経営者やベンチャーの人たちが、オリンピックのトライアスロン競技と同じ距離(51.5km)に挑戦しています。
トライアスロンは自分の体をきっちり作っていないとできないので、嘘がないんですよ。トライアスロンなら「やっぱりタイム速いやつは、できるやつだ」と認識されています。
こういうことが、トライアスロンが人気の理由のようです。

 

Doスポーツはもっと面白く進化する

編集部 :
Doスポーツで、新しい体験ができる機会など、興味深いトレンドがありましたら教えて下さい。
間野教授:
従来の近代スポーツの枠組みにとらわれずに、みんなが楽しめるスポーツを目指す、「未来の運動会」「ゆるスポ」「超人スポーツ」が新しいと思います。これら3つは法人化しています。

※編集部注
「未来の運動会」:
一般社団法人 運動会協会による企画で、今までの運動会の「綱引き」のような種目とは違う新しい種目を、参加者全員で考えて楽しむ、「する」だけでなく「作る」スポーツまで楽しめます。

「ゆるスポーツ」:
一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会 澤田智洋さん等のクリエイターが、身体能力が低い人も楽しめる、ユーモラスな「ゆるスポーツ」を考案。

「超人スポーツ」:
一般社団法人 超人スポーツ協会が、「現代のテクノロジーによるスポーツの再発明」をコンセプトに、ウェアラブルデバイスやハイテク車いすなど、テクノロジーを駆使した新しい競技を提案しています。

間野教授プロフィール

1963年 12月2日 横浜市生まれ、1991年 東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。
2002年 早稲田大学人間科学部助教授に就任、以降、早稲田大学で専門分野のスポーツ政策論で教鞭をとる。
2009年に早稲田大学スポーツ科学学術院教授に就任、2015年に早稲田大学スポーツビジネス研究所所長(兼任)、現在にいたる。
文部科学省、スポーツ庁の関連機関をはじめとする、数多くのスポーツ関連団体の委員等を務める。
好きなスポーツは、硬式野球、テニス、ゴルフ、スキー、水泳のほか、イギリスやインドで人気がある球技のクリケット。

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